請求処理を簡単に!中小企業が知っておくべき請求書受領の基本と効率化のポイント
中小企業の経営者や経理担当者にとって、請求書処理業務は毎月発生する業務のひとつです。
しかし、起業したばかりで請求書を受け取る経験が少ない場合や、業務が煩雑になってしまっている場合、効率化しようとしてもどこから手をつけるべきか悩んでしまうこともあるでしょう。
この記事では、これから請求書受領業務を効率化して業務負担を軽減したいと考えている中小企業の経営者や経理担当者に向けて、基本的な請求書受領業務の流れと、効率的に請求書受領業務を進める方法をわかりやすく解説します。
基本的な請求書受領業務の流れ
請求書を受領した際の処理は、次のような一連のプロセスで進行します。
請求書の受領
取引先から郵送やメールで請求書が送られてきます。主な受領方法は以下の通りです。
- ① 郵送
多くの事業者間でやり取りされる方法ですが、請求書を紙で受け取ることは、請求書を送る側と受け取る側の双方にとって、非効率です。
受け取るために出社が必要になったり、紙で受け取る請求書が多ければ多いほど、開封作業に時間がかかります。
また、郵政法の改正により、2021年10月から土曜配達の休止や、配達日数の繰り下げが実施されているので、手元に届くまでに時間がかかります。 - ② メール
特別なツールを導入する必要がないため、迅速に受け取る手段として多くの事業者で取り入れやすい方法で、現状の最適解の1つといえます。
多くの日本企業では、請求書をメールに添付することがセキュリティ面で懸念されていたことから、メールでパスワード付きのZipファイルを送った後に別メールでパスワードを送るという方式、いわゆるPPAP方式が採用されています。ですが、近年ではPPAP方式についても問題が指摘され、日本政府もPPAPの廃止を表明するなど、世の中的にも廃止の流れになっています。
詳しくは請求書のメール添付についてをご覧ください。 - ③ 請求書発行システム
請求書を作成して送るサービスは世の中に多く存在し、独自システムから汎用的なシステムまでさまざまな種類のシステムが存在します。
取引先のシステム導入状況に左右されますが、自社が請求書を受け取るためにアカウント登録が必要なものもあります。複数のサービスアカウントを持つようになると、受領するために1つ1つログインする必要があるため、手間が増えないように注意が必要です。 - ④ デジタルインボイス(Peppol)
デジタルインボイスやPeppolという言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、まだ課題が多く、普及が進んでいない状況です。
詳細はデジタルインボイス(Peppol)の仕組みと普及に向けての課題の記事をご覧ください。
最近では、電子請求書の受領が増えていますが、当社が実施した調査によると、請求書をすべて紙で発行していると回答した企業は半数近く存在し、まだ紙ベースの請求書も多く見られます。
【調査概要】
■調査方法:インターネットリサーチ
■実施期間 2024年1月31日(水)~2024年2月1日(木)
■調査対象:請求書の受領もしくは発行の関連業務を行っている財務・経理部門に所属する会社員
■割付条件
従業員 1-29名の企業に所属 103サンプル
従業員 30-99名の企業に所属 103サンプル
従業員 100-299名の企業に所属 103サンプル
従業員 300名以上の企業に所属 103サンプル
合計 412サンプル
ですが、2024年10月1日から実施された郵便料金の値上げによって、多くの事業者がコストを削減するために電子請求書に切り替えることが予測されます。
今は紙で受け取ることが多いかもしれませんが、電子で受け取る機会も増えてくるでしょう。早い段階で紙でも電子でも効率的に受領する業務体制を構築しておくと安心です。
請求書内容の確認
日付、金額、請求元情報、取引内容などに誤りがないかなど、受け取った請求書が正しいかどうか内容を確認します。
取引先が課税事業者の場合は、インボイス制度に対応した適格請求書であるのかを確認する必要があります。
詳細は後述のインボイス制度の章をご覧ください。
社内の支払承認依頼
多くの場合、請求書は経理担当者や責任者による承認が必要です。このプロセスがスムーズに進まないと、支払いが遅れ、取引先との信頼関係に影響を及ぼすことがあります。
起票
支払う請求書に対する取引内容や、金額、支払期日、科目などを会計システムやExcelなどに入力し、保存します。
支払いの実行
請求書が承認された後、支払い期日までに正確に支払いが行われるように手配します。
記録と保存
請求書の内容を適切に記録し、会計帳簿に反映させるとともに、法定期間に基づいて保管します。関連する法制度については、請求書にまつわる法制度をご覧ください。
受領した請求書のチェックポイント
請求書は、企業によって使用するフォーマットが異なりますが、基本的には次の要素が含まれます。
- ① 受領者(自社)の情報
会社名や担当者名など自社の情報が記載されています。 - ② 発行者の情報
会社名、住所、連絡先など発行者の情報が記載されています。 - ③ 事業者登録番号
課税事業者の場合は、適格事業者登録番号が記載されています(詳細は後述のインボイス制度の章をご覧ください)。 - ④ 発行日
請求書を発行した日付が記載されています。
4月分を集計して5月1日に発行する場合に、発行日ではなく締め日(4月30日)で記載されている場合もあります。 - ⑤ 請求書番号
問い合わせのやり取りでどの請求書か分かるように一意に識別する番号が記載されています。 - ⑥ 支払期限
受領者がいつまでに支払えばよいのか、支払期限が記載されています。取引する前に事前に取り決めている場合は請求書に記載されていないケースもあります。 - ⑦ 支払方法、支払先の情報
受領者がどのように支払えばよいのか、支払方法や振込先の口座情報が記載されています。
こちらも支払期限と同様に取引する前に事前に取り決めている場合は請求書に記載されてこないケースもあります。
銀行振込の場合はどちらが振込手数料を負担するのかを明記していることがあります。 - ⑧ 請求金額
受領者が支払う必要のある合計金額が記載されています。 - ⑨ 消費税率ごとの対象金額、消費税額
受領者が消費税の計算がしやすいように消費税率や消費税額が記載されています。
インボイス(適格請求書)の場合は必須となります(詳細は後述のインボイス制度の章をご覧ください)。 - ⑩ 商品やサービスの詳細
品番、品名、数量、単価、小計など請求の内訳が分かる情報が記載されています。
これらの情報が漏れなく正確に記載されているか確認することが、後のトラブル防止に役立ちます。
請求処理にまつわる法制度
インボイス制度
請求書を作成する上でインボイス制度の内容を理解しておく必要があります。
きちんと理解したい方は下記の動画や資料をご覧ください。
(動画)「インボイス制度」への“超”実践的な対応方法
最低限のポイントだけを抑えておきたい方は下記をご参照ください。
課税事業者の場合
適格事業者として登録し上記①~⑩の項目を記載して請求書を作成します。
適格事業者の登録については国税庁の「適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」をご覧ください。
免税事業者の場合
上記「③登録事業者番号」以外の項目を記載します。
電子帳簿保存法
受領した請求書を保管する際は電子帳簿保存法の要件を満たして保管する必要があります。
電子帳簿保存法の詳細は下記にて解説していますが、電子帳簿保存法は請求書以外の経理関係の書類も対象となります。
電子帳簿保存法の理解や対応に時間を使いたくない方は電子帳簿保存法対応のサービスを利用して経理関係の書類を保管するようにしましょう。
(動画)「改正電子帳簿保存法 電子取引」への“超”実践的な対応方法
電子帳簿保存法対応の製品はJIIMA(日本文書情報マネジメント協会)による認証済みのサービスが公開されています。
電子取引とスキャナ保存の両方に対応した製品を選択すると確実です。
参考:
請求書受領業務の課題
事業者における請求書受領業務には、次のような課題に悩む方が多く見られます。
手作業の多さによるミスや作業負担の増大
請求書を受領してから手入力でシステムに反映し、承認プロセスを進めることが一般的です。しかし、手作業が多いと時間がかかるうえ、ヒューマンエラーのリスクも高まります。
受領方法が増えると、さまざまなシステムにログインする手間や、郵便で受け取った請求書の開封に時間がかかったりと請求書を確認するまでに多くの時間がかかります。
申請や承認の漏れによる支払遅延
社内の担当者が申請を忘れてしまったり、承認者が出張でおらず、回覧が進まないなどが起こると支払遅延につながり、取引先からの信用を失う可能性があります。
また、取引が拡大してくると、1つの請求書に関係する部署が増え、承認回覧に時間がかかってしまうケースもあります。
紙ベースでの管理により検索がしづらい
まだ多くの中小企業で紙の請求書で社内処理されており、これが業務の煩雑化や紛失のリスクを高めています。
処理が終わった紙の請求書はファイリングして保管する企業がほとんどのため、手間もかかるうえ、物理的なスペースも必要になります。
監査対応などで請求書などの書類を探す際にも紙管理だと、時間がかかってしまいます。
法対応のために手間やチェックの確認工数が増える
電子帳簿保存法やインボイス制度に対応するためには、法制度を正しく理解し、適切に処理を行うことが求められます。しかし、難しい要件を理解して、社内周知するまでに時間がかかったり、ミスが増えるなどが想定され、迅速な処理から遠のいてしまいます。
効率的に請求処理を進める方法
これらの課題を解決し、請求書受領業務を効率化するには、以下のような方法があります。
電子で請求書を受け取る
紙ベースの請求書から電子請求書に移行することは、効率化への第一歩です。電子で受け取ることができれば、場所に縛られず、いつでもどこからでもアクセスが可能です。
また、紛失リスクがなくなり、電子保管をすれば、管理・検索も容易になります。
まずは電子的に請求書を受け取るところから始めましょう。
OCR処理で入力を自動化する
BPOサービスのように人が入力を代行してくれるサービスもありますが、人件費高騰の背景から費用が高い傾向にあるため、OCR処理を検討するとよいでしょう。
OCR処理によって、取り込んだPDFから自動的に金額や取引先などの情報をデータ化できます。手書きの請求書の場合、精度が落ちることがありますが、Excelやシステムで作成された請求書なら問題なくデータ化できるでしょう。
ただし、OCRの中には、1つ1つの請求書の読み取り箇所をマッピングする作業が必要な製品もありますので、読み取り箇所をAIで判定してくれるAI OCRサービスを検討すると取引先の多様なレイアウトの請求書でも入力の自動化が期待できます。
申請承認フローを整理して電子化する
紙で申請承認を回覧している場合、電子化することで効率化が見込めます。
ワークフローシステムを導入する方法もありますが、請求書受領業務に特化した主要なクラウドサービスのワークフロー機能を利用すると、前述のAI OCRも活用でき、1つの請求書を複数人で同時に回覧できたり、代理承認機能があったりと、担当者の負担を軽減できるでしょう。
電子化する前に承認フローを整理しておくと、よりスムーズな業務進行が期待できます。
インボイス制度、電子帳簿保存法に対応したツール・サービスを導入する
各法制度をきちんと理解して業務遂行することが求められますが、難しい要件を理解して社内周知するまでに大きな対応コストがかかります。
法制度に則った保存やチェックが簡易的にできるツールを導入することで、対応コストや確認工数を減らして、法令遵守しながらも効率的な業務体制を構築できます。
請求処理効率化のメリット
請求書受領業務を効率化・自動化することで、以下のようなメリットがあります。
- ① 業務時間とコストの削減が可能に
手作業を減らし、承認や支払いフローを自動化することで、従業員の業務負担を軽減できます。これにより、経理担当者や経営者は単純な入力・確認作業から解放され、本来の重要な業務に集中できるようになります。
残業時間の削減につながり、社員満足度向上につなげることもできるでしょう。 - ② ミスや不正リスクの軽減
入力業務を自動化することで、ミスによる支払い遅延やトラブルを防止できます。 - ③ ノウハウの属人化防止
経理業務は正確に迅速に処理することが求められますが、十分に経験を積んだベテランの従業員でないと時間内に終わらないなど「その人にしかできない」といった属人的業務になりがちです。
経理担当者の退職によって請求書処理が滞ってしまう事態を避けるために、整理された業務フローにしておくことが必要です。 - ④ 管理・検索の効率化
電子で保管していれば、管理・検索が容易で、日常業務で社内からの問い合わせ対応や監査対応などで焦ることも減るでしょう。
まとめ
基本的な請求書受領業務の流れと効率的に請求書受領業務を進める方法について、中小企業向けに解説しました。電子請求書への移行やAI OCRの活用、承認プロセスの電子化など、効率化のために具体的な手法を取り入れることで、業務の煩雑さを解消し、コスト削減を実現できます。
起業したばかりの経営者や、業務効率化を目指す経理担当者にとって、これらの改善策はビジネスの成長に欠かせない要素です。まずは、自社の請求書受領フローを見直し、効率化に向けた一歩を踏み出してみてください。
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