請求書の処理業務にまつわるリスク
企業の不正リスク調査※1によると、上場企業で2018年から2020年の3年間に不正事例があったと回答した企業の割合は46.5%、そのうち発生・損害金額ともに最も多いのが「横領」です。
そこで横領の3大パターンと言われる、着服・横流し・キックバックについて見てみましょう。
横領の3大パターン
着服
着服とは、現金・預貯金をただ盗むだけでなく、経費の水増し・代金架空請求などさまざまなパターンがあり、下記のような事例が存在します。
- 北海道消防協会の経理担当職員が、銀行口座から約7,000万円を着服していたケース
「北海道消防協会職員が不正経理、7000万円を着服」 - 三菱食品の子会社執行役員が架空の請求書を偽造し、約10年で9億8,000万円相当をだまし取っていたケース
「三菱食品/連結子会社の役員が9億8000万円を着服」 - 新日鉄住金の社員が鋼材の原料を架空発注して、会社側から代金をだまし取ったケース
「新日鉄住金の元社員逮捕 詐欺容疑、5億円被害か」
横流し
横流しとは、会社等の所有する切手・商品・建築資材などの物資を正規のルートによらず転売することで、下記のような事例が存在します。
- 建設作業員が、銅線ケーブル1440キロを業者に売却していたケース
「銅線ケーブル1440キロを業者に売却 業務上横領で34歳男を逮捕」 - 購買担当社員が、原材料を盗み、社外に転売していたケース
「寺崎電気産業で2億円超着服か 社員が原材料転売、大阪府警に告訴検討」
キックバック
キックバックとは、謝礼や販促金などの目的で金銭などを渡すことで、上記2つと異なり行為自体は横領ではありません。
しかし、水増し・架空請求などを個人的に利益を得る目的で行った(行わせた)場合は横領となり、下記の事例が存在します。
- 毎日放送社員が、番組制作費用を制作会社に余分に請求させ、水増し分を約7年で1,000万円を現金でキックバックさせていたケースなど
「毎日放送社員が1000万円着服 刑事告訴はせず」 - バンダイの元社員が取り引き先から約2億円を不正に受け取っていたケースなど
「取引先からキックバック、バンダイ社員「2億円」受け取る…どんな罪に問われる?」
以上のように会社役員・従業員等による横領事例は枚挙に暇がなく、横領の発覚により会社のブランド・信用が毀損されることも多く、さらに追徴課税される可能性もあり得るなど、横領により会社が受けるダメージは計り知れません。
横領に有効な対策
不正防止には、定期的な担当者の交代や一連の業務を複数人で担当するなどの対策が有効ですが、システム面での業務プロセスの改善・見直しも同様に有効です。
システム化というと業務効率化や生産性向上というメリットが思い浮かびますが、オペレーションを人の手を介さずに自動化できれば、単純なミスの撲滅はもとより、人の手による改ざんがしづらくなる利点もあります。
さらに、請求書のデータ化に伴い、詳細なデータ分析をより簡単に行うことが可能となり、不正の早期発見・抑止につながります。